実は黒字経営の地方私鉄の優等生!福島交通飯坂線乗車記

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はじめに


2005年10月10日、廃線の足音が迫る茨城県の鹿島鉄道線、福島県内のいわき~郡山間を結ぶ磐越東線への乗車を終えた私は、郡山駅から新幹線へと乗り継ぎこの日最後の目的地となる福島交通飯坂線へと向かった。

福島交通飯坂線は、福島県を地盤とするバス・鉄道事業者である福島交通が運営する鉄道路線で福島駅から飯坂温泉までの9.2kmを結んでいる。福島交通飯坂線は、地味なローカル私鉄路線ではあるが継続的な黒字経営が続けられており、実は地方私鉄の優等生的な路線であるのだ。

今回は、この福島交通飯坂線の乗車記を綴りたい。


目次


1.福島交通飯坂線とは


福島交通飯坂線は、福島県の県庁所在地である福島駅を起点として同じ福島市内の飯坂温泉駅までの9.2kmを結ぶ鉄道路線で、福島県を地盤とするバス・鉄道事業者である福島交通により運営が行われている路線である。

全線が単線路線ではあるが直流1500Vで電化されており、2両又は3両編成の電車が日中は25分間隔で運行され、福島駅から飯坂温泉駅までの観光客の足としての役割の他、沿線住民の通勤・通学の足としての役割を担っている路線である。

また、多くの地方路線とは異なるユニークな点としては、ワンマン運転が一切行われておらず、全列車に車掌が乗務していることが大きな特徴で、経営状態も安定しており継続的に黒字経営が続けられている路線でもある。

福島交通飯坂線の運営会社である福島交通は、福島県中通り地区と浜通り地区北部の路線バス事業と、福島駅・郡山駅を中心に各地を結ぶ高速バス事業が事業の中核で、現在は経営共創基盤 (IGPI) が出資する持株会社みちのりホールディングス(みちのりHD)の傘下にあり、同HDの代表会社となっている。


2.起点の福島駅は阿武隈急行線と駅施設を共有


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▲福島交通電車のりば入口


郡山駅から東北新幹線のMaxやまびこ・つばさ117号に乗り福島駅へと到着したのは16時14分のことであった。福島交通飯坂線の電車のりばはJR線の駅舎とは完全に分離されていることから、私は一旦JRの改札口を出ることにした。

福島交通の電車のりばは、JR福島駅舎の仙台寄りの外れに入口があり、JR駅ビルと雑居ビルに挟まれた間に電車のりばへと向かう通路が設けられていた。


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▲駅舎内の様子


ビルの間に挟まれた通路を抜け福島交通の駅舎に入ると、出札窓口、自動券売機、改札口があり、改札口越しには阿武隈急行の電車の姿をみることができた。実は、福島交通の福島駅舎は阿武隈急行線と共同で使用されていることが大きな特徴で、駅施設を福島交通と阿武隈急行で共同使用となっている。

阿武隈急行は、福島県や宮城県などが出資する第三セクター鉄道会社であるが、阿武隈急行には福島交通も出資を行っており大株主となっていることから、こうしたことが福島交通と阿武隈急行での駅施設の共同利用にも関係しているものと思われた。


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▲ホームの様子(左が福島交通7000系で右が阿武隈急行8100系)


改札口を抜けてホームへと出ると、そこには1面の島式ホームを挟み込むような形で、福島交通の電車と阿武隈急行の電車の双方が停車しており、デザインの異なる2社の電車を同時に見ることができる光景は大変に楽しい。

また、2005年当時は土・休日限定で500円で飯坂線1日フリー乗車券が販売されていたことから、このフリー切符を購入して飯坂線の乗り潰しを行うこととした。なお、福島~飯坂温泉間の当時の片道運賃は360円で往復すると720円となることから、この1日乗車券で往復した場合には220円安くなる計算となった。


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▲飯坂線1日フリー乗車券


3.福島交通の7000系電車


当時の福島交通飯坂線の主力車両は、1991年に東京急行電鉄から譲渡された7000系電車で、この7000系電車の中間車に運転台を取り付けて2両又は3両に編成を短縮した車両が当時の福島交通飯坂線の主力車両として活躍していた。

東京急行電鉄の7000系電車は、日本国内の他のローカル私鉄会社にも多く譲渡され、青森県の弘南鉄道、石川県の北陸鉄道、大阪府の水間鉄道、埼玉県の秩父鉄道でも編成が短縮された車両が活躍していた。


4.夕暮れ時を飯坂温泉へ!


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▲車内の様子


福島駅からはちょうど16時45分に発車する飯坂温泉行があったことからこの電車に乗り、終点の飯坂温泉駅を目指すことにする。そして、発車時刻となり、電車は家路を急ぐ地元の乗客を乗せて福島駅を発車した。

福島交通飯坂線は、全長9.2kmの路線に12もの駅があり平均駅間距離は1kmにも満たないことが大きな特徴で、こまめに発車と停車を繰り返しながら終点の飯坂温泉駅を目指して進んでいく。

沿線の大半が福島の市街地を通過するため乗客の出入りも賑やかで、駅に停車するたびに車掌氏が忙しそうにドアの開閉作業や切符の集札作業を繰り返していく。そして、それまで明るかった空も、飯坂温泉駅が近づくにつれて徐々に暗くなり始めていく。

終点の飯坂温泉駅には、17時10分に到着。福島駅からの所要時間は25分であった。


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▲飯坂温泉駅の車止め


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▲福島駅から乗車してきた7000系電車


5.終点の飯坂温泉駅


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▲改札口の様子


福島交通飯坂線終点の飯坂温泉駅は2面1線の頭端式ホームを持つことが特徴の駅で、道路や温泉街からは1段低い摺上川の川縁に位置していることから半地下構造のような不思議な構造となっている駅だ。

電車を降りたホームの先には改札口があり、その改札口を出ると出札窓口や券売機、待合室などを備えた駅舎へと入ることができる。有人改札口や出札窓口はどことなく昭和レトロな雰囲気を醸し出している感じがした。


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▲出口は階段上に


飯坂温泉駅は半地下のような構造となっていることから改札口を抜けた先には出口へと続く上り階段があり、駅舎を出た先にはレトロな雰囲気の飯坂温泉街の光景が広がっていた。


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▲サンクスを併設した飯坂温泉駅舎


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▲摺上川沿いに広がる飯坂温泉街


そして、私は駅周辺の散策を終えたのち再び折り返しの福島行電車で帰路へと付いた。


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▲レトロな雰囲気の発車票




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