はじめに
2005年の年末も差し迫った12月23日、私は東北各地の未乗路線の乗り潰しを果たすため北海道&東日本パスで再び遠征へと出た。
この時の目的路線は、白新線、陸羽西線、陸羽東線、気仙沼線、石巻線、仙石線、仙山線、左沢線、山形鉄道フラワー長井線、米坂線の8路線だ。
新潟駅から朝の普通列車で村上駅へと到着した私は、鶴岡駅まで特急いなほ1号でショートカットするべく列車の到着を待った。
目次
1.特急いなほ号とは
▲2005年当時の特急いなほ号イメージ(Wikipediaより引用)
特急いなほ号は、JR東日本が、新潟駅~酒田駅・秋田駅間を白新線・羽越本線経由で運転する特急列車で、2005年当時は485系3000番台の6両編成で定期列車7往復と臨時列車2往復が運行されていた。
中でも当時は定期列車7往復のうち4往復が酒田駅発着、2往復が秋田駅発着だった他、1往復が遠く青森駅まで足を伸ばし、新潟~青森間を6時間以上かけてかけて東北地方の日本海沿岸地域を縦断していたことは興味深い。
そして、この青森駅発着の特急いなほ号は2000年まで大阪~新潟~青森間を12時間かけて直通運行していた特急白鳥号のダイヤを踏襲しているというのも面白いポイントだ。
今回、私が村上駅から乗車する新潟駅始発の特急いなほ1号の行先は秋田駅である。村上駅からは新潟県と山形県の県境を超える区間において普通列車の本数が激減するため、スケジュールの有効活用を考慮して村上駅から鶴岡駅までの区間を特急列車でショートカットすることにした。
この時は、まさかこの2日後に羽越本線内で特急いなほ号が大事故を起こしてしまうことなど予想だにできなかった。
2.村上駅で鶴岡駅までの切符を購入!
私の乗車する特急いなほ1号秋田行は、新潟駅を8時33分に発車し村上駅へとやって来るのは9時21分。その後、約1時間強をかけて日本海沿岸を北上し、山形県庄内地方の鶴岡駅に到着するのは10時26分だ。
この時、私が使用していた北海道&東日本パスは普通列車限定の切符であることから特急列車に乗車するためには別途、乗車券と特急券を購入する必要がある。私は、村上駅のみどりの窓口で村上~鶴岡間の乗車券1,280円とB自由席特急券900円を購入し、特急いなほ1号へと乗車することにした。
3.羽越本線を鶴岡、そして余目へ!
秋田行の特急いなほ1号は、越後平野の北端部に位置する村上駅を過ぎると列車は海と山に挟まれた海岸線の区間を走行し新潟県最北端の府屋駅へと向かう。
真冬の日本海を車窓に眺めながら列車は30分ほどで府屋駅へ到着。そして県境を越え山形県へ。府屋駅からは20分ほどで山形県最初の停車駅であるあつみ温泉駅へ。
そして、やがて車窓に庄内平野の景色が開け10時26分、列車は鶴岡駅へと到着した。鶴岡駅のある山形県鶴岡市は人口約14万人(2005年当時)を擁する山形県庄内地方の中心都市である。
鶴岡駅で特急いなほ1号を下車した私は3分間の接続で酒田行の普通列車へと乗り換え、陸羽西線への乗換駅である余目駅へと向かった。車窓から見えた庄内平野は黒い雲で覆われ始めており風も徐々に強くなりはじめていた。
4.2日後に北余目駅付近で起きた羽越本線列車脱線事故
そして、私が余目駅を訪れた2日後の2005年12月25日、この余目駅と目と鼻の先の区間で5人もの痛ましい犠牲者を出したJR羽越線列車脱線事故が起きたのである。
JR羽越線列車脱線事故は、2005年12月25日19時14分頃、山形県東田川郡庄内町榎木のJR東日本羽越本線北余目駅~砂越駅間の第2最上川橋梁付近において、秋田発新潟行きの上り特急「いなほ14号」(列車番号:2014M-485系3000番台6両編成・新潟車両センター所属R24編成)が橋梁を通過した直後に、最も軽量であった2両目から脱線を始めて最終的に全車両が脱線、うち3両が転覆し、先頭車両が線路脇の養豚場(養豚・山形和牛肥育畜舎)共同団地内養豚の堆肥舎に激突して大破した列車事故である。脱線時の運行速度は、運転士の証言等から約時速100キロメートルと見られており、この事故により先頭車両に乗っていた5人が死亡し、32人が重軽傷を負った。
私がこの事故の一報を知ったのは、仙台市内の宿泊先であった仙台駅東口の東横インであったが、自分が2日前に近くを通った場所で起きた大参事に大変な驚きを覚えたとともに、犠牲者の方々への冥福を祈った。
また、この日は仙台市内でも、同じ時間帯に仙台駅西口近くのアーケード街「マーブルロードおおまち」で7名の重軽傷者を出したトラック暴走通り魔事件が起きており、旅先の近場で2つもの重大事件と遭遇をすることになるのであった。
なお、2008年6月に起きた秋葉原通り魔事件の容疑者は当時仙台在住で事件現場のアーケード街に近い場所に住んでおり、通り魔事件の取調べでトラックで人を撥ねることについてこの事件を参考にしたと供述している。
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